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展示会レポート「第1回 次世代照明技術展」

【スタート画面】
展示会レポート「第1回 次世代照明展技術」

インターモールド写真

去る2009年4月15日(水)〜17日(金)の4日間,東京・有明の東京ビッグサイトにおいて,「第1回 次世代照明技術展」(ライティングジャパン)が開催されました(主催:リード エグジビション ジャパン)。

地球温暖化問題に起因する環境意識の高まり,また政府による白熱電球全廃の方針に対し,白熱電球市場を寡占する企業が相次いで製造縮小・廃止を決定したことなどから,白色LEDや有機ELなどの次世代照明に注目が集まっています。
ここではその中から,生産加工の新たなビジネスチャンスになりそうな部分をメインに,いくつか目についたものをご紹介します。

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【展示会の概要と見学の印象】
2010年を契機に,巨大市場創出が期待される白色LED照明

インターモールド写真

照明市場をリードする企業が白熱電球の生産打ち切りを表明したことで,2010年以降,すべての電球,蛍光ランプ類の約10%以上がLED照明に置き換わると予想されている。世界各国で消費される全エネルギーのうち,照明に費やされる電力消費量は約20%にも達するということであるから,この照明器具の置き換えが環境に与える影響がいかに大きいか,容易に想像される。またこの流れが市場に与える影響も大きい。

白色LEDや青色LEDに関する基本特許は,2010年の前半には切れることから,ここが新たな市場創出,また海外勢との競争激化のターニングポイントになるという見方が強くある。また技術的にも,白色LEDは「照明として使うには集束されすぎた光」,「発熱が寿命に大きな影響を与える」「自然な色の表現が難しい」などの課題があり,こうした課題解決にビジネスチャンスを見出そうと,さまざまな分野の企業がすでに動き始めている。

【展示会の概要と見学の印象】
実用化がより現実味を帯びてきた、面発光で期待される有機EL照明

インターモールド写真

白色LED照明が次世代照明の本命と目される一方で,よりその存在感をアピールし始めたのが,写真のLumiotec鰍フ展示に見られるような,有機EL照明だ。

ソニーの薄型ディスプレイや車載用のモニターなどに利用されている有機ELは,LEDと異なり面発光で,演色性も良好で照明に適した拡散型の光源であること,非常にシンプルな構成なので,写真のように照明器具全体を軽く薄く作ることができること,また白熱灯より高い電力効率であり,蛍光灯に対しても消費電力の面で優位性が見込めることなどがアピールポイントとなる。

しかし一方で,寿命やコストなど解決できていない問題もあり,材料面を中心に,今後の研究開発が期待される。

Lumiotec

【展示会の概要と見学の印象】
@ 白色LED照明実用化で成形・機械加工にビジネスチャンス!?

ライティングジャパン写真

”白色LED照明”といえば,その色再現性(「演色性」という)の向上が重要なポイントであることから,蛍光体などの出展が多いと思いきや,意外にも機械加工・成形加工関連の出展が多いことに驚いた。それは,LED照明の以下のような特徴によるものだろう。

白色LEDは、光が直線的に進む”指向性光源”であること、点発光の光源であることなどが、照明に利用する上での課題となり、導光板などの配光技術が必要となる。また、LED光源は本来発熱しないと言われていたが、実は予想以上に発熱することが分かってきている。発熱は、他の照明用光源に対して白色LED照明の大きなメリットである、「長寿命」の阻害要因となるため、放熱対策も必要となる。

写真のニイガタ鰍焉Cそうした配光技術にプラスチックレンズ試作の経験を活かして参入する企業。これまで高コストのガラスで試作をしていたレンズの代替として,切削によるアクリルレンズ・導光板・光学部品の試作を行う。

ニイガタ

 

【成形加工技術で放熱対策にブレイクスルーを】
A 複雑プレス加工による放熱フィンの薄板プレス化

ライティングジャパン写真

複雑形状部品のプレス化,切削部品や鍛造部品のプレスへの置き換えなどを精力的に行っている最上インクスからは,放熱対策のひとつの提案として,薄板で放熱フィンをプレスかする試みが提案されていた。

材質はアルミ・銅・ステンレスなどで,オフセットフィンやコルゲートフィン形状を形成,ときにはこれらを積層することで,表面積の拡大による放熱効率の向上,乱流の促進などを狙う。
プレス加工のためコスト競争力も高く,切削や押し出し加工では限界のあった,自由な流路設計も可能になるという。

轄ナ上インクス

【成形加工技術で放熱対策にブレイクスルーを】
B 高熱伝導合金によるアルミニウムダイカスト放熱対策

ライティングジャパン写真

情報通信分野や自動車の電装品など,エレクトロニクス関連の精密ダイカストに実績のある葛梵Mからは,熱伝導性の高いアルミニウム合金による,電灯器具のヒートシンクが展示されていた。従来照明に比べて非常に長い寿命を持つLED照明だが,発熱により,その寿命は極端に低下する。そのため,20W以上の照明器具には放熱対策は必須になるという。

DMS1(熱伝導率210W/m℃),HT-1(熱伝導性169〜178W/m℃)などの高熱伝導合金は,一般的な材料であるADC-12(熱伝導率96W/m℃)に比べ,熱伝導率は約2倍と高い性能ながら,鋳造性に課題を残している。これらを独自の鋳造技術で複雑形状の成形を行い,製品化している。写真は,高伝導合金と樹脂の一体成形によるランプソケット。

 

葛梵M

 

【成形加工技術で放熱対策にブレイクスルーを】
C 放熱性セラミックスによるソケット,基板成形加工

ライティングジャパン写真

これまでの金属製ヒートシンクは、ファンによる冷却やアルミフィンにゆる表面積拡大などにより、積極的に外気を当て冷却を行っていたが、ナラサキ産業鰍ヘ放射率0.98という高い放熱特性をもつアルミナセラミックス「N-9H」による素材置き換えと成型加工の提案を行っていた。

放熱性、絶縁性に優れ、窒化アルミニウムと比べて経済的なこの素材を外側パッケージ、シリコンサブマウント、ヒートシンク部に利用していくことで、シンプルかつ高効率の放熱対策が行えるという。

 

ナラサキ産業

 

【成形加工技術で放熱対策にブレイクスルーを】
C 放熱性セラミックスによるソケット,基板成形加工(つづき)

ライティングジャパン写真

放熱性セラミックス(放射率<0.97,熱伝導率39W/m・k)とアルミ板(放射率<0.05,熱伝導率238W/m・k)をそれぞれヒートシンクとし,アルミプレート上に固定した6WクラスのLEDにて放熱比較を行う実験も会場で行われていた。

左がアルミ板,右が放熱性セラミックス。この実験では,放熱性セラミックスが高い放熱性をもつことを示している。同社によれば,光源のワット数が上がると,さらにこの差は顕著になるという。

 

ナラサキ産業

   

【成形加工技術で放熱対策にブレイクスルーを】
D ヒートシンク一体型基板の成形

ライティングジャパン写真

写真のように,ヒートシンクと基板を一体成形することで,放熱効率を向上する技術が,電子部品の部材調達・基板実装・完成品製造販売に実績のあるシークス梶iSIIX)より展示されていた。

従来はヒートシンク上にサーマルペーストやサーマルパッドを解してアルミ基板を貼り付けるが,基板とヒートシンクを一体化することでサーマルパッド(またはペースト)が不要となり,熱伝導性の向上、ヒートシンクの小型化が実現する。

 

また同社では,ガラスエポキシのFR-4を基材とし,銅ピンを埋め込むことでアルミを超える伝導率を安価かつ軽量に実現した放熱基板なども紹介していた。

 

シークス

 

【求められる配光制御技術】
E 「超狭角」「超高輝度」8°プラスチックレンズ

ライティングジャパン写真

レンズ制作に実績のある潟Gンプラスは,光の集束度の高いLED光源を照明に活かすため,光拡散用のレンズを提案する一方で,その高い光制御技術を活かして,さらなる超狭角・超高輝度を狙った配光角度8°のレンズを展示していた。

これはショーウインドウなどのライトアップ用途を狙ったもので,光利用効率80%,照度は従来レンズ比で1.5倍に向上している。

光自体には熱がないLEDの特性を活かし,陳列物を傷めないスポットライトとしての用途が期待できる。

 

潟Gンプラス

【求められる配光制御技術】
F 導光板を使わないLED直下型フラット照明装置

ライティングジャパン写真

光学設計・コンサルティングや光学部品部品・測定器に実績のある潟Iプトデザインからは,残念ながら詳細な技術は明らかにされていないが,導光板やレンズを一切使わずにLEDで均一な面発光を実現する,「LED直下型フラット照明装置」が紹介されていた。新たな配光用技術として,注目される。

この製品は,LEDからの光束の90%以上を有効利用し,発光面の照度を±5%以内にできるのが大きな特徴。写真でも,中央左の導光板を用いたものに比べ,中央右のこの技術を用いたものは,均一に発光しているのが見てとれる。また写真では若干暗いように見えるが,均一にかなり明るく発光させることももちろん可能。

レンズや導光板不要のメリットとしては,均一に配光が行えるほか,非常に早く性能向上するLED光源に合わせて,金型などを毎回開発する必要がないという点も大きいという。

 

オプトデザイン

  

【その他にもある次世代照明技術】
G 「100%回収・再利用」を実現する新しい照明「リン光灯」

ライティングジャパン写真

有機ELリン光材料を使用し,「100%回収,再利用」という興味深いコンセプトを掲げていたのが「リン光灯」と呼ばれるこの製品。透明電極が内面に形成されたガラス管に,真空蒸着もしくは塗布装置にて有機EL発光素子を形成するもので,直流電源にて発光する。陰極にアルミニウムを蒸着しているため鏡面状の蛍光灯といった外観となっている。

高効率・長寿命の有機ELリン光材料を使用しているが,長期使用により効率が低下すると,回収・再利用を行う。100%再利用を実現するため,リース契約による貸し出しという供給形態とし,専用の再生装置によって内面の厚さ1μm程度の発光素子のみを除去・再形成する。

 

フジテック・インターナショナル

 

Show:

A. スタート画面 B. 展示会の概要1C. 展示会の概要2 1.展示会の概要3 2. 放熱フィンの薄板プレス化 3. 高熱伝導合金のダイカスト 4. 放熱セラミックス成形加工4. 放熱セラミックス成形加工(つづき) 5. ヒートシンク一体型基板 6. 超狭角プラスチックレンズ 7. 導光板を使わないフラット照明装置8.新しい照明「リン光灯」

 

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